ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究

計画研究:A03 理論班
原始ブラックホール・巨視的ダークマターの探究

研究代表 柳 哲文
 原始ブラックホール(Primordial Black Hole:PBH)とは宇宙初期に形成されるブラックホールの総称である。本計画研究ではPBHに関するこれまでの理論的研究をより「深化」(精密化、精度向上)させると共に、標準的なPBH形成過程を超えた幅広いモデルへの「拡張」を行い、過去及び将来の観測による「検証」を提案し、徹底的にPBHのダークマターとしての可能性を精査することを目的としている。

 「深化」の面ではPBH形成のシミュレーションを通して形成条件や得られるブラックホールの角運動量と質量の見積もりなどの精密化を行う。また、PBH形成の統計的な取り扱いを、元となる初期揺らぎの統計性を考慮に入れた、より現実的な物に発展させる。「拡張」の面では、PBH形成を起こすインフレーションモデル、等曲率揺らぎによるPBH形成、重力崩壊を起こす位相欠陥を伴う素粒子モデル等、あらゆる可能性を考え、それぞれについて、特に背景重力波を中心に、観測的な「検証」方法を提案していく。また、PBHだけでなく、比較的コンパクトで巨視的な天体によるダークマターに関しても共通する点が多く、その可能性についても併せて検討する。

 本研究で深化、拡張された理論的予言をもとに、ブラックホールに伴う天体現象を通して観測的な検証方法を提案し、各B班と協力することでPBH、巨視的ダークマターの可能性を徹底的に検証する。また、PBHダークマターモデルに特徴的な構造形成の解析においてはC02班と、インフレーションモデルや位相欠陥を伴う素粒子モデルの構築では関連する他の理論班と協力して研究を進める。
メンバー
研究代表者
柳 哲文 Chulmoon YOO
名古屋大学 理学研究科 講師 重力崩壊シミュレーション 統括、数値シミュレーション

研究分担者
佐々木 節 Misao SASAKI
東京大学 カブリ数物連携宇宙研究所 特任教授 初期宇宙モデル構築

原田 知広 Tomohiro HARADA
立教大学 理学部 教授 PBH形成過程と統計の理論解析

黒柳 幸子 Sachiko KUROYANAGI
名古屋大学 理学研究科 招聘教員 観測的検証方法の提案

Alexander KUSENKO
UCLA 教授 / 東京大学 カブリ数物連携宇宙研究所 客員上級科学研究員 素粒子理論からのPBH形式モデル構築


はじめに

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