2020年度後期講義「幾何学XE/数物先端科学VIIII」(月曜日 10:25 〜 12:10)
授業のzoom URLは、itc-lms(幾何学XE), itc-lms(数物先端科学III) もしくは utas で見てください。xxxx@g.ecc.u-tokyo.ac.jp のアカウントでサインインしている人のみ入室できます。
目次
開講のお知らせ
9月28日
10月5日
10月12日
10月19日
10月26日
11月2日
11月9日
11月30日
12月7日
12月14日
12月21日
1月4日
1月7日
開講のお知らせ
授業の概要・目的
この講義では量子展開環とその標準基底(結晶基底ともいう)を取り扱いま
す.量子展開環は,複素単純 Lie 環の普遍展開環の量子変形であり,Drinfeld
と神保により独立に導入されました.もともとは可解格子模型の研究に由来が
あるのですが,この講義では Lie 環とその表現論の自然な拡張であるという立
場から取り扱います.標準基底は,Lusztig によって導入された量子展開環の
上三角部分環の基底で,さまざまなよい性質を持つものです.同時期に柏原に
よって定義された結晶基底と一致することが,のちに証明されました.この基
底は複素単純 Lie 環の表現論自体にも多くの応用を産み出しました.講義の前
半では,標準基底の定義を初等的に与え,その性質を調べます.後半では,有
限次元代数(箙の道代数)の表現論との関連である,Ringel-Lusztig の理論を
紹介する予定です.
授業のキーワード
量子展開環、標準基底
授業計画
- 量子展開環の定義と最高ウェイト加群
- 組み紐群の作用
- PBW基底
- 標準基底
- 箙の道代数とその表現を用いた量子展開環の構成
成績評価の方法・基準
講義の途中に提出される問題を解答し、レポートとして提出する
教科書
なし
参考書
- Hong-Kang, Introduction to quantum groups and crystal bases, GSM 42,AMS
- Jantzen, Lectures on quantum groups, GSM 6,AMS
- Lusztig, Introduction to quantum groups, Progress in Math. 110,Birkhauser
履修上の注意
予備知識は,谷崎「リー代数と量子群」,Humphreys「Introduction to Lie
Algebras and Representation Theory」などの教科書にあるような複素単純
Lie 環の基本的な事柄は,証明なしに使うことになる予定です.
その他
予習の必要はないが、毎回復習することが望ましい。
以前にした同内容の授業
2002年度後期幾何学特論II
9月28日にやったこと
§. ${\mathbf U}_q(\mathfrak{sl}_2)$の定義と表現論
- 生成元と関係式による表示
- (n+1)次元表現の構成
- Verma表現の構成
- (n+1)次元表現の既約性, 既約表現の分類
- ホップ代数の説明
- カシミール元
- ${\mathbf U}_q(\mathfrak{sl}_2)$ の有限次元表現の完全可約性
ノート
10月5日にやったこと
- ${\mathbf U}_q(\mathfrak{sl}_2)$ の普遍 $R$ 行列の構成
§. ${\mathbf U}_q(\mathfrak{g})$の定義と表現論
- Kac-Moody Lie 環の定義
- Serre 関係式と、$\mathrm{ad} f_i$ の表現としたときの有限次元性との関連の説明
- ルートの定義、正ルート
- ワイル群の定義
ノート
課題
- $\mathcal R$行列の計算の詳細を与えよ。
- $\mathcal R$行列を二次元既役表現とそれ自身のテンソル積のときに計算せよ。
締切は1月末に設定してありますが、二週間程度の間に解答したほうが、今後の授業の理解には役立ちます。
10月12日にやったこと
- ワイルの部屋、最短表示
- 最長元の最短表示と、正ルートの集合の全順序
- 普遍展開環 ${\mathbf U}(\mathfrak{n}^+)$ の PBW 基底
- 量子展開環 ${\mathbf U}_q(\mathfrak{n}^+)$ の PBW 基底と標準基底についての、お話 (シラバスに書き忘れていたこと)
- ${\mathbf U}_q(\mathfrak{g})$ の定義
- bar involution の定義
- 表現のウェイト空間分解
- 最高ウェイト加群、Verma加群
ノート
課題
- 最長元の最短表示に付随した正ルートの集合 $\Delta^+$上の全順序が、凸性を持つことを示せ。
- 普遍展開環のPBW定理を証明せよ。
- 量子展開環の余積が定義関係式と compatible であることを証明せよ。
10月19日にやったこと
§. 組紐群の${\mathbf U}_q(\mathfrak{g})$への作用
Y.Saito, PBW basis of QUE's, Publ. of RIMS 30 (1994)に基く
- ${\mathbf U}_q(\mathfrak{sl}_2)$ の可積分表現の場合
- ${\mathbf U}_q(\mathfrak{g})$ の可積分表現の場合
- $\operatorname{Ad}$ を用いた ${\mathbf U}_q(\mathfrak{g})$ への作用
- 随伴作用 $\operatorname{ad}$ による q-Serre 関係式と、$\operatorname{Ad}(T_i)(f_j)$ の理解
ノート
課題
- $(\exp_q X)^{-1} = \exp_{q^{-1}}(-X)$を証明せよ。
- $\mathfrak{sl}_2$の組紐作用素に関するProp. 1 の証明の詳細を与えよ。
- ${\mathrm Ad} T_i(x)$に関するTh. の証明の詳細を与えよ。
10月26日にやったこと
- $\operatorname{Ad}(T_i)(\operatorname{ad}(f_i^{(m)})(f_j)
= \operatorname{ad}^*(f_i^{(-a_{ij}-m)})(f_j)$ 等の式
- $\operatorname{Ad}(T_i)^{-1} = \ast \operatorname{Ad}(T_i)\ast$
- $i\neq j$ に対して $a_{ij} a_{ji} = 0,1,2,3,{}^\ge 4$に応じて $h(i,j)=2,3,4,6,\infty$ とおく。$\operatorname{Ad}(\underbrace{\cdots T_i T_j}_{\text{$h(i,j)-1$項}})(f_i) = f_j$ or $f_i$
§. 組紐群とワイル群
- 表示式 $s_i^2 = 1$, $(s_i s_j)^{h(i,j)} = 1$.
- 組紐群 $B_W$ を $\sigma_i$ を生成元とし, $\underbrace{\sigma_i \sigma_j \dots}_{\text{$h(i,j)$項}} = \underbrace{\sigma_j \sigma_i \dots}_{\text{$h(i,j)$項}}$ を関係式として、定義される群とする
- $w= s_{i_1} s_{i_2} \dots s_{i_k}$ を最短表示とするとき $\tilde w = \sigma_{i_1}\sigma_{i_2} \dots \sigma_{i_k}$ とおくと、最短表示の取り方によらない。
- $T_i$, $\operatorname{Ad}(T_i)$ は組紐群の関係式を満たす
- 以下 $\tilde w$ に対応する組紐作用素を $T_w$ で表す。
§ PBW基底
- $w(\alpha_i)\in\Delta^+$ のとき $T_w(f_i)\in\mathbf U_q^-$ となる。
- $w(\alpha_i) = \alpha_k$ のとき $T_w(f_i) = f_k$ となる
証明の途中で終わった。
ノート
課題
- $a_{ij}=-3$のとき、Th.1 の証明を完成せよ。
- 階数 2 のリー環で$a_{ij}=-2, -3$のとき、最後の Prop. の証明を完成せよ。
11月2日にやったこと
- 証明の続き
- ワイル群の最長元 $w_0$ の最短表示 $s_{i_1}s_{i_2} \dots s_{i_\nu}$を取り固定する. ($\vec{h}$であらわす)
- $L(\vec{c},\vec{h}) = f_{i_1}^{(c_1)} T_{i_1}(f_{i_2}^{(c_2)}) \dots T_{i_1}T_{i_2} \dots T_{i_\nu-1}(f_{i_\nu}^{(c_\nu)})$とおく.
- $\vec{c} = (c_1,\dots,c_\nu)$ を動かすとき, $\{ L(\vec{c},\vec{h})\} $ は $\mathbf U_q^-$ の基底を定める. これを PBW 基底という.
- Levendroskii-Soibelman formula
- $T_w$ とテンソル積
§ PBW基底の基底変換
しばらく $\mathfrak{sl}_3 = A_2$ とする。$\vec{h} = (121)$, $\vec{h}' = (212)$とし、対応するPBW基底 $\{ L(\vec{c},\vec{h})\}$, $\{ L(\vec{c}',\vec{h}')\}$ の間の基底の変換を考察する。
- $f_{12} = T_1(f_2)$, $f_{12}' = T_2(f_1)$ とおく。
- $$f_2^{(l)} f_1^{(m)} f_2^{(n)} = \sum_{k=0}^l q^{(l-k)(m-k)} \begin{bmatrix} l-k+n \\ l-k\end{bmatrix} f_1^{(m-k)} f_{12}^{(k)} f_2^{(l-k+n)}$$
- $$f_1^{(l)} f_2^{(m)} f_1^{(n)} = \sum_{k=0}^n q^{(n-k)(m-k)} \begin{bmatrix} n-k+l \\ n-k\end{bmatrix} f_1^{(n-k+l)} f_{12}^{(k)} f_2^{(m-k)}$$
- ${\mathbf B}(\infty) = \{ f_2^{(l)} f_1^{(m)} f_2^{(n)} \mid m\ge l+n\}
\cup \{ f_1^{(l)} f_2^{(m)} f_1^{(n)} \mid m\ge l+n\}$ とおく。ただし、
$m=l+n$ の $f_2^{(l)} f_1^{(l+n)} f_2^{(n)} = f_1^{(n)} f_2^{(l+n)} f_1^{(l)}$ は共通部分となる。
- ${\mathbf B}(\infty)$ は $\mathbf U_q^-$ の基底をなす。(あとで一般の複素単純リー環に対して定義する標準基底)
- ${\mathbf B}(\infty)$で生成される $\mathbf U_q^-$の $\mathbb Z[q]$-部分加群、
$\{ L(\vec{c},\vec{h})\}$ で生成される $\mathbf U_q^-$の $\mathbb Z[q]$-部分加群、
$\{ L(\vec{c}',\vec{h}')\}$ で生成される $\mathbf U_q^-$の $\mathbb Z[q]$-部分加群は全て等しい。これを $\mathcal L_{\mathbb Z}(\infty)$ で表す。
- $\mathcal L_{\mathbb Z}(\infty)/q \mathcal L_{\mathbb Z}(\infty)$ に
${\mathbf B}(\infty)$, $\{ L(\vec{c},\vec{h})\}$, $\{ L(\vec{c}',\vec{h}')\}$が
誘導する$\mathbb Z$-基底は、すべて等しい。
- 基底の変換行列が誘導する $\vec{c} = (c_1,c_2,c_3)$, $\vec{c}' = (c_1',c_2',c_3')$ の変換は
$$c_1' = c_2 + c_3 - \min(c_1,c_3), \quad c_2' = \min(c_1,c_3), \quad c_3' = c_1 + c_2 - \min(c_1,c_3)$$
という区分的線型写像で与えられる。
ノート
課題
- 命題の証明の途中で出てきた主張 $w\in W$ を $w = w' w^{\prime\prime}$ ($w^{\prime\prime}\in \langle s_i, s_j\rangle$)と、$l(w's_i) = l(w') + 1$, $l(w's_j) = l(w') + 1$, $l(w) = l(w') + l(w^{\prime\prime})$を満たすように分解できることを示せ。
- あとの方の補題で出てきた式 $f_2^{(l)} f_1^{(m)} = \sum_{k} q^{(l-k)(m-k)} f_1^{(m-k)} f_{12}^{(k)} f_2^{(l-k)}$を示せ。
11月9日にやったこと
一般の複素単純 Lie環 $\mathfrak g$ の最長元 $w_0$ の最短表示 $\vec{h}$, $\vec{h}'$ について、次の主張を考える。
- $\{ L(\vec{c},\vec{h})\}$ で生成される $\mathbf U_q^-$の $\mathbb Z[q]$-部分加群、
$\{ L(\vec{c}',\vec{h}')\}$ で生成される $\mathbf U_q^-$の $\mathbb Z[q]$-部分加群は等しい。これを $\mathcal L_{\mathbb Z}(\infty)$ で表す。
- $\mathcal L_{\mathbb Z}(\infty)/q \mathcal L_{\mathbb Z}(\infty)$ に
$\{ L(\vec{c},\vec{h})\}$, $\{ L(\vec{c}',\vec{h}')\}$が
誘導する$\mathbb Z$-基底は、等しい。
この主張が、任意の$\{i, j\}\subset I$ ($i\neq j$)に対応する階数 $2$ の Lie部分環について正しいとすると、$\mathfrak g$ の $\mathbf U_q^-$ についても正しいことが、組紐群の関係式が階数 $2$ で与えられていることの帰結として従う。特に $A_2$のときは上のように正しく、$A_1 + A_1$のときには自明に正しいので、$ADE$型のときは正しいことが従う。
あとは $B_2$, $G_2$のときに上の主張を示せば、任意の複素単純 Lie環 $\mathfrak g$ について正しいことになる。事実として、これは正しいことが知られている。
§ $\mathbf U_q^-$の内積
- ${}^\prime \mathbf U_q^-$ を q-Serre関係式を除いた自由代数とする。
- ${}^\prime \mathbf U_q^-\otimes {}^\prime \mathbf U_q^-$に、捻れた積
$$(x_1\otimes x_2)\cdot (x_1'\otimes x_2') = q^{-(\operatorname{wt}x_2,\operatorname{wt}x_1')} x_1x_1' \otimes x_2 x_2'$$
を導入し、$r: {}^\prime \mathbf U_q^-\to {}^\prime \mathbf U_q^-\otimes {}^\prime \mathbf U_q^-$ を $r(f_i) = f_i\otimes 1 + 1\otimes f_i$ を代数の準同型として伸ばしたものとする。
- 次の性質を満す${}^\prime \mathbf U_q^-$上の$\mathbb Q(q)$-値双線型形式 $(\ ,\ )$が唯一つ存在する。
- $(f_i, f_j) = \frac{\delta_{ij}}{1- q_i^2}$
- $(x,yy') = (r(x), y\otimes y')$
- $(xx',y) = (x\otimes x', r(y))$
さらに、これは対称である。
- $r(\operatorname{ad}^*(f_i^{(1-a_{ij})})(f_j)) =
1\otimes \operatorname{ad}^*(f_i^{(1-a_{ij})})(f_j)
+ \operatorname{ad}^*(f_i^{(1-a_{ij})})(f_j)\otimes 1$
が成り立ち、$r$ は $\mathbf U_q^-\to \mathbf U_q^-\otimes \mathbf U_q^-$ を引き起こす。
- 対称双線型形式 $(\ ,\ )$ は$\mathbf U_q^-$に落る。
- $(x,y) = (x^*, y^*)$
- ${}_ir$, $r_i$ の定義
- $(f_iy,x) = (f_i,f_i) (y, {}_ir(x))$,
$(yf_i,x) = (f_i,f_i)(y, r_i(x))$ が成り立つ。
- $$ e_i x - x e_i = \frac{r_i(x) t_i - t_i^{-1} {}_i r(x)}{q_i - q_i^{-1}}$$
- $\bigcap_i \operatorname{Ker} {}_i r = \mathbb Q(q) 1 = \bigcap_i \operatorname{Ker} r_i$
- $(\ ,\ )$ は非退化である。
ノート
課題
- Prop. 1(3)の証明の step 2 を完成せよ。
- Lemma 3 の証明を与えよ。
- Lemma 7 の証明の step 2 を完成せよ。
11月30日にやったこと
まず、前回までの復習を行った
- $\mathbf U_q^-[i]$, ${}^*\mathbf U_q^-[i]$ の定義
- $\mathbf U_q^-[i] = \mathbf U_q^-\cap T_i\mathbf U_q^- = \operatorname{Ker}{}_i r$
- $\mathbf U_q^- = \mathbf U_q^-[i]\oplus f_i \mathbf U_q^-$ の直交性
- $x,y\in\mathbf U_q^-[i]$ のとき、$(x,y) = (T_i^{-1}(x), T_i^{-1}(y))$ が成り立つ。
- PBW基底は直交基底である。
$$(L(\vec{c},\vec{h}), L(\vec{d},\vec{h}))= \delta_{\vec{c},\vec{d}} \prod_{p=1}^\nu \prod_{d=1}^{c_p} \frac1{1 - q_{i_p}^{2d}}$$
が成り立つ。
内積の応用
- $\mathbb A_0 = \{ f\in \mathbb Q(q) \mid \text{$f$ is regular at $q=0$}\}$ とおく。$\mathbb Z[q]$ の類似である。
- 11月9日の定理の類似として、$\mathbb A = \mathbb Z[q,q^{-1}]$, ${}_{\mathbb A} \mathbf U_q^-$ を $f_i^{(n)}$ で生成される $\mathbb A$-部分代数としたときに
- $${}_{\mathbb A} \mathbf U_q^- = \bigoplus \mathbb A L(\vec{c},\vec{h})$$
- という主張を考える。これが階数 $2$ の Lie 部分環について正しいとすると、$\mathfrak{g}$ についても成り立つ。
- $A_2$ 型のときには、11月2日にチェックしていて正しいので、ADE 型のときには正しい。
- $B_2$, $G_2$ 型のときに正しいことは、比較的簡単に証明できるので、一般のときにも正しい。($G_2$ 型は Xi: On PBW bases of the quantum group $U_v(G_2)$, Alg. Colloq. 2 (1995)で示されている)
- 以下では、これを認めるので、上の主張は一般の $\mathfrak{g}$ で正しいとする。
- $\mathcal L(\infty) = \{x\in \mathbf U_q^- \mid (x,x)\in\mathbb A_0\}$ とおく。これは、$\{ L(\vec{c}, \vec{h}) \}$ で生成される $\mathbb A_0$ 部分加群に等しい。
- $x\in {}_{\mathbb A} \mathbf U_q^-$ が $(x,x) - 1 \in q\mathbb A_0$ を満たすとすると、$x\equiv \pm L(\vec{c},\vec{h})$ mod $q\mathcal L(\infty)$ となる $\vec{c}$ がある。
- $\mathcal L(\infty)$ は内積で決められているので、$w_0$ の最短表示の取り方にはよらない。これは、11月9日に説明したことの弱い形の主張である。
- また、下の主張も内積のみでstate されているので、$\mathcal L(\infty)/q \mathcal L(\infty)$ に誘導される基底は、$\pm$ を除いて、最短表示の取り方にはよらないことも分かる。
§標準基底
- bar involution $\overline{\ }$ を考える。これを PBW 基底で行列表示すると、upper unitriangular である。すなわち
$$\overline{L(\vec{c},\vec{h})} = L(\vec{c},\vec{h}) + \sum_{\vec{d}>\vec{c}} a_{\vec{d}} L(\vec{d},\vec{h})$$
となる。
- ここで、$\vec{d} > \vec{c}$ の順序 $>$ は成分をはじめから読む辞書式順序である。
ノート
課題
- Lemma 2 (1)を $\mathfrak{sl}(2)$ による具体的な計算でチェックせよ。
12月7日にやったこと
- 標準基底 $\{ b(\vec{c},\vec{h})\}$ の定義と存在
- $\overline{b(\vec{c},\vec{h})} = b(\vec{c},\vec{h})$
- $L(\vec{c},\vec{h}) = b(\vec{c},\vec{h}) + \sum_{\vec{d} > \vec{c}} a_{\vec{d}} b(\vec{d},\vec{h})$ with $a_{\vec{d}}\in q\mathbb Z[q]$.
- $ADE$型のときは、$\mathcal B(\infty) = \{ b(\vec{c},\vec{h})\}$ は $w_0$ の最短表示 $\vec{h}$ の取り方によらない
- 区分的線形変換による、基底のパラメトリゼーションの変換
- 内積を用いた、signed canonical base $\widetilde{\mathcal B}(\infty) = \{ \pm b(\vec{c},\vec{h})\}$ の特徴づけ
- $BCFG$ 型でも signed canonical base は、$\vec{h}$ の取り方によらない
- $\ast$ で、signed canoincal base は保たれる。
§表現の標準基底
- $\varepsilon_i(b)$, $\varepsilon_i^*(b)$ の定義
- $b = b(\vec{c},\vec{h})$ で、$\vec{h}$ が $i$ から始まるとき、$\varepsilon_i(b) = c_1$.
- $\{ b\in\widetilde{\mathcal B}(\infty) \mid \varepsilon_i(b) \ge n \}$ は、$f_i^n \mathbf U_q^-$ の signed base
- $\lambda$ を支配的な整ウェイトとし、 $V(\lambda)$ を対応する有限次元既約表現とする。$V(\lambda) = \mathbf U_q^-/I_\lambda$, $I_\lambda = \sum_i \mathbf U_q^- f_i^{\langle \lambda,h_i\rangle+1}$ であった。
$$\widetilde{\mathcal B}(\lambda) = \{ b\bmod I_\lambda \mid \varepsilon_i^*(b) \le \langle\lambda,h_i\rangle \forall i\}$$
とおくと、$V(\lambda)$ の signed base である。
- 柏原作用素 $\tilde{e}_i$, $\tilde{f}_i$ の定義
- $i$ から始まる $w_0$ の最短表示を取ると、$\tilde{e}_i$, $\tilde{f}_i$ は、$c_1$ を $\mp 1$ するものになる。
- $\widetilde{\mathcal B}(\infty) = \{ \pm \tilde{f}_{i_1}\tilde{f}_{i_2}\dots \tilde{f}_{i_p} 1 \mid p\in\mathbb Z_{\ge 0}, i_1,\dots, i_p\in I \}$ となる。
- $\widetilde{\mathcal B}(\infty)$, $\tilde{e}_i$, $\tilde{f}_i$ は、表現論の組み合わせ論的な`骨'を与える。
ノート
課題
- $\mathfrak g = A_2$ のとき $\varepsilon_1$, $\varepsilon_2(b)$ を計算せよ。
- `小さな' $\lambda$ について、$\widetilde{\mathcal B}(\lambda)$ を計算せよ。
- $\tilde{e}_i$, $\tilde{f}_i$ を表現の標準基底 $\widetilde{\mathcal B}(\lambda)$ について、`小さな' $\lambda$ について計算せよ。
12月14日にやったこと
§箙とその表現
- 箙の表現
- 道代数
- $\mathbf E_Q(V) = \bigoplus_{h\in Q_1} \mathrm{Hom}(V_{o(h)}, V_{i(h)})$, $GL_Q(V) = \prod_{i\in Q_0} GL(V_i)$
- 既約表現、直既約表現
- 既約表現 $S_i$
- Krull-Schmidt定理
- 有限型
- Gabrielの定理:有限型であることは、underlying な unoriented graph が Dynkin ADE 型であることと同値。さらに、有限型のとき、直既約表現は、次元ベクトルを考えることで、正ルートと一対一に対応する。
- Tits 形式の正値性
§反射関手
- sink, source
- $\Phi_i^+$, $\Phi_i^-$ の定義
- 分裂する短完全列
$$0 \to \Phi_i^-\Phi_i^+(V,B)\to (V,B) \to (V,B)(i) \to 0$$
- $(V,B)$ が直既約とすると、$\Phi_i^+(V,B)$ が直既約であるか、もしくは $(V,B)\cong S_i$ のいずれかが成り立つ。また、前者のとき $\dim \Phi^+(V,B) = s_i \dim (V,B)$ となる。ここで、$s_i$ は、頂点 $i$ に対応する単純鏡映である。
ノート
12月21日にやったこと
Gabrielの定理の証明の続き
- $Q$に adapted な $w_0$の最短表示 $\vec{h}$
- adapted な $w_0$の最短表示 $\vec{h}$ があれば、Gabrielの定理が従う。
- $p > q$ のとき $\operatorname{Hom}_{kQ}(\Phi^-_{i_1}\dots\Phi^-_{i_{p-1}}(S_{i_p}), \Phi^-_{i_1}\dots\Phi^-_{i_{q-1}}(S_{i_q})) = 0$ が成り立つ。
- Coxeter element, Coxeter数
- adapted な $w_0$の最短表示 $\vec{h}$は存在する。したがって、Gabrielの定理の証明が完了した。
§箙の表現論について
oriented cycle はないと仮定する。
- $\{ S_i\}_{i\in Q_0}$ は、単純加群の同型類の完全代表系
- アーベル圏 $\mathcal C$ のGrothendieck群 $K(\mathcal C)$
- $K(\operatorname{Rep}_k Q) = \mathbb Z^{Q_0}$
- 射影加群
- $P(i) = i$から出発する path の生成する表現
- $\{ P(i)\}_{i\in Q_0}$ は直既役射影加群の同型類の完全代表系
- 表現$M = (V,B)$ の射影分解
$$ 0 \to \bigoplus_{h\in Q_1} P(i(h))\otimes kh \otimes V_{o(h)} \xrightarrow{d_1} \bigoplus_{i\in Q_0} P(i)\otimes V_i \xrightarrow{d_0} V \to 0$$
$$ d_0(p\otimes v) = pv, \quad d_1(p\otimes h\otimes v) = ph\otimes v - p\otimes B_h v$$
- $\operatorname{Ext}^i(M,N)$
- $\operatorname{Ext}^i(M,N) = 0$ if $i > 1$ (hereditary)
- Tits form $\langle M,N\rangle = \sum_i (-1)^i \dim \operatorname{Ext}^i(M,N)$
- $K(\operatorname{Rep}_k Q)$ に落ち、$\sum \dim M_i \dim N_i - \sum \dim M_{o(h)} \dim N_{i(h)}$ で与えられる。
- カルタン行列は $\langle S_i, S_j\rangle_Q + \langle S_i, S_j\rangle_{\overline{Q}}$ で与えられる。ただし、$\overline{Q}$ は $Q$ の辺の向きを逆にした箙
ノート
1月4日にやったこと
§Ringel-Hall 代数
- $\mathcal H$ の定義
- 結合律を満たす
- $A_1$-quiverの場合
- twisted multiplication
- $A_2$-quiverの場合の計算 -- q-セール関係式
- twisted Ringel-Hall代数は ${}_{\mathbb A} \mathbf U_q^-$と同型である。
- $i$をsinkとしたとき $\mathcal H_i^+$ の定義、$i$をsourceとしたとき $\mathcal H_i^-$ の定義
- 可換図式
$$\begin{array}{ccc} {}_{\mathbb A} \mathbf U_q^- & \xrightarrow{\cong} & \mathcal H\\ \cup && \cup \\ \overline{{}_{\mathbb A}\mathbf U_q^-[i]} & \xrightarrow{\cong} & \mathcal H_i^+ \\ \overline{T_i}^{-1}\downarrow\cong && {\cong}\downarrow q^{-(\alpha_i,\dim\bullet)}\Phi_i^+ \\ \overline{{}_{\mathbb A}^*\mathbf U_q^-[i]} & \xrightarrow[\cong]{} & \mathcal H_i^-\end{array}$$
- PBW基底は、Ringel-Hall代数の表現の同型類のなす基底に対応する。
ノート
1月7日にやったこと
Lusztig によるcanonical baseの構成の brief introduction
ノート
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