2003年度前期講義「幾何学I」
目次
開講のお知らせ
4月9日
4月16日
4月23日
4月30日
5月7日
5月14日
5月21日
5月28日
6月4日
6月11日
6月25日
7月2日
7月9日
試験問題
合格者発表と講評
4月9日開講
5月7日の演習の時間は小テストを行う.
6月4日の授業は休講, 演習の時間に小テストを行う.
6月18日の授業, 演習は創立記念日のため休講.
6月25日の授業は休講. 演習の時間は復習の問題をやる.
7月9日の演習の時間は小テストを行う予定.
7月9日で講義は終わり
7月23日 10:30〜12:00に試験の予定
授業内容
微分可能多様体について基本的な事項を解説する。昨年度の幾何学IIの授業のつづきであるが, かならずしもこれを受講している必要はない。過去の対応する授業のレジュメは, http://www.kusm.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/Lecture/00_Kika2.html にある。今年度のレジュメもWeb pageで公開する予定である。
参考書
- 松本幸夫: 多様体の基礎, 東京大学出版会
- 森田茂之: 微分形式の幾何学1, 岩波講座 現代数学の基礎
- 松島与三: 多様体入門, 裳華房
4月9日の午前中にやったこと
§序. 多様体の例, 作り方
- 空間を商空間で作る. (実)射影空間
- 空間を貼りあわせで作る. 二次元球面, トーラスから三次元球面, トーラスへ
- 座標と座標変換
4月9日の午後にやったこと
§1. 多様体の定義
- 位相多様体の定義
- C∞級微分可能多様体の定義
- 例. Rn, Rn の開集合
- Sn, メビウスの帯
- 射影空間
4月16日にやったこと
- 射影空間続き
- 先学期にやったRnに埋め込まれた多様体
- 積多様体
§2. 多様体の間のC∞級写像
- 多様体上の関数がC∞級であることの定義. 各点 p ∈ Mに対して, その回りの座標系 φ : U → V を取ると, f○φ-1がC∞級である.
- 例. 先学期にやったRnに埋め込まれた多様体上のC∞級関数
- 例. 射影空間上の関数 f([x0,...,xn]) = x02/ x02+ ... + xn2
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4月23日にやったこと
- 多様体M, Nの間の連続写像 F:M → N がC∞級であるとは, 各点 p ∈ Mに対して, その回りの座標系 φ : U → V とF(p)の回りの座標系 ψ : U'→ V' で F(U)⊂U’となっているものを取ると, ψ○F○φ-1がC∞級であるときをいう.
- 射影空間の間の同次多項式からさだまる写像
- 多様体の開集合上で定義された写像を拡張する
§3. 接ベクトル, 接空間
- 多様体の点pにおける接ベクトルの定義,
- 接ベクトルの全体を接空間といい, Tp M で表わす.
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4月30日にやったこと
- 座標 φ : U → V を取ったとき, (∂/∂xi)p の定義
- i = 1,..,n と動かしたとき, これが接空間 TpMの基底をなす.
- 二つの座標が与えられたとき, 上の基底の変換行列が座標変換のヤコビ行列で与えられる.
- f が M 上のC∞級関数のとき, dfp : Tp M --> R が定まる.
- F : M --> N がC∞級写像のとき, dFp : Tp M --> TF(p) N が定まる. これを F の p における微分という.
- dFpは座標を取れば, ヤコビ行列に他ならない.
- 合成写像の微分法則 d(G F )p = d GF(p) dFp
- F : M --> N がはめ込み, 埋め込み, 沈め込み, であることの定義
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5月7日にやったこと
- F : M --> N がはめ込み, 埋め込み, 沈め込み, であることの定義を復習して,
はめ込みと埋め込みの違いについて説明
- 多様体の間のC∞級写像についての逆関数定理, 陰関数定理,
逆関数定理の系(微分が単射のとき...)
- 包含写像 S ⊂ M が埋め込みであるとき, Sは部分多様体であるという.
- S ⊂ M が部分多様体であることと, Sの各点の回りのMの座標(x1,...,xn)で, Sが局所的に xd+1 = ... = xn = 0 と表されるものがあることは同値である. (d = dim S)
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5月14日にやったこと
§4. ベクトル場
- ベクトル場の定義. 各点 p∈M にたいして Xp という接空間 TpMの元が与えられ, 座標ベクトル場を用いて表わしたときに, 係数がC∞級という意味で, C∞級であるものをベクトル場という.
- X, Y : ベクトル場, f : C∞級関数のとき, X+Y, fX はやはりベクトル場になる.
- ベクトル場による関数の微分 Xf の定義
- 定理. X : C∞(M) --> C∞(M) が 線形でライプニッツの法則を満たすとき, それはベクトル場が定めるものである.
- ベクトル場のLieブラケット [X,Y]の定義
- C∞級写像 F: (-ε, ε) × M → M であって, F(0,p) = p を満たすものがあるとき, ∂/∂t F(t,p) |t=0 = Xpによって M 上のベクトル場 X が定まる. その例として S2 のz軸の回りの回転, T2の平行移動から決まるベクトル場
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5月21日にやったこと
- ベクトル場 X が与えられたとき, dc/dt = Xc(t) を満たす曲線をその積分曲線という. 初期値 c(0) = pを与えたとき少なくとも十分に小さいtについては存在する. (常微分方程式の解の存在定理より)
- 局所1パラメータ変換群 φt を φt(p) = c(t) で定める. ただし c(t) は, c(0)=pとなる積分曲線である.
- φt〇φs = φt+sを満たす.
- 局所1パラメータ変換群を用いると Xf = limt→01/t×(φt*f - f)で与えられる.
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5月28日にやったこと
- ベクトル場 X に対応する局所1パラメータ変換群をφtとすると,
[X, Y] = limt→01/t×(φ-t*Y - Y)で与えられる.
§5. Lie群, Lie環の初歩
- Lie群の定義
- 例. Rn, GL(n,R), SL(n,R), GL(n,C), SL(n,C), O(n), U(n)
- Xが左不変ベクトル場とは (Lg)*X = Xが成り立つときをいう.
- 左不変ベクトル場の全体は, R上のベクトル空間をなし, ベクトル場のLie括弧 [ , ] で閉じている. これを G のLie環といい, g(本当はドイツ花文字)であらわす.
- 定理. Lie環 g は, G の単位元における接空間 TeGと, 写像 X → Xeによって線形空間として同型になる.
- G = GL(n,R) のとき, 左不変ベクトル場のLie括弧 [ , ] は上の同型のもとで行列の交換子 [A, B] = AB - BA と同一視される.
- G ⊂ GL(n,R) が部分群であって, さらに部分多様体でもあるとき, リー環 g を単位元における接空間 TeGとみなし, さらに包含写像の微分によって行列の全体の中の線形部分空間と思うことにする. このとき, 左不変ベクトル場のLie括弧 [ , ] は上の同型のもとで行列の交換子 [A, B] = AB - BA と同一視される. 特に,
行列の交換子のもとで, 上の線形部分空間が閉じていることが分かる.
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6月4日にやったこと
演習小テスト問題と略解 pdf, gzipped postscript
6月11日にやったこと
- Lie群 G 上の左不変ベクトル場は完備である.
- exp: g → G を exp X = φ1(e) で定義する. ただしφtは, X に対応する1パラメータ変換群
- exp(t+s)X = exptX exp sX, d/dt|t=0exp tX = X をみたす. (1パラメータ部分群)
- 逆にこの性質を持てば, 左不変ベクトル場に対応した1パラメータ部分群である.
- G = GL(n,R) のとき, exp は行列の指数写像である.
- F : H → G が群の準同型で, C∞級でもあれば, dFeはLie環の間の準同型になる.
- F : H → G が群の準同型で, C∞級でもあれば, exp(dFe(X)) = F(exp X)
- 第一標準座標系 exp , 第二標準座標系 (x1,...,xn)→ exp(x1X1) ... exp(xnXn)
- 定理. H ⊂ G が部分群であり, 部分多様体でもあると, G/H に自然な射影 π: G → G/H, 作用 G x G/H → G/H がC∞級になるように, C∞級多様体の構造を入れることができる.
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6月25日にやったこと
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7月2日にやったこと
§6. Frobeniusの定理
- 各点xで, 接空間TxMのs次元部分空間 Dxが与えられているものをs次元分布という.
- 各点xごとにその近傍で定義されたC∞級ベクトル場 X1, X2,...,Xsで, その近傍の各点ごとにDの基底になっているものが取れるとき, DはC∞級であるという.
- ベクトル場 X がDに属するとは, 各点xごとに Xx∈Dxとなるときをいう.
- D が包合的であるとは, X, YがDに属するならば [X,Y]も Dに属するときをいう.
- D の積分多様体とは i:N → M という単射なC∞級埋め込み写像で, dixN(TxN) = Di(x)が成り立つときをいう.
- Frobeniusの定理. D が s 次元の包合的なC∞級分布とする. 各点 x に対し, x を通る積分多様体が存在する. さらに x の
まわりの座標系で xi = 定数 (i=s+1,..,n) が, どんな定数についても積分多様体であるものが存在する.
§7. 1 の分割
- 位相空間 X がパラコンパクトであるとは, 任意の開被覆 { Uα }α∈A に対して, 局所有限な細分{ Vβ }β∈B が取れることをいう.
- X がσコンパクト, すなわちコンパクト集合の可算個の和であるとき, パラコンパクトである. (証明は演習)
- 定理. M はパラコンパクトなC∞級多様体であるとき, 任意の開被覆 { Uα }α∈A に対して, C∞級関数の属{ fβ }β∈B であって, 次をみたすものが取れる.
- 0 ≦ fβ ≦ 1
- Vβ = { x∈ M | fβ(x)≠0 } とおくと, { Vβ }β∈B は{ Uα }α∈A の局所有限な細分であって, さらにVβの閉包はコンパクトである.
- 各点 x について Σβ∈B fβ(x) は 1 に等しい. (和は有限和である.)
- 応用. パラコンパクトな多様体は, リーマン計量を持つ.
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7月9日にやったこと
§8. 微分形式と積分 (introduction)
- 余接空間 T*pM = TpMの双対空間
- 座標を取ると (dx1)p, ..., (dxn)pが(∂/∂x1)p, ..., (∂/∂xn)pの双対基底として定まる.
- 1次微分形式 α とは, 各点 p ごとにT*pM の元 αpが与えられているもので, 上の基底の一次結合で書いたときに, その係数が p についてC∞級になるもののことである.
- 座標変換の公式. dxi = Σj( ∂xi/∂yj) dyj
- C∞級関数 f に対する外微分作用素 df の定義
- 1次微分形式 αと1次元多様体 M について ∫M α を定義する.
- 一の分割によって α は座標近傍の外では 0 と仮定してよい.
- 座標を入れて α = f(x) dx と表わしたとき ∫M α = ∫ab f(x) dx と定義する.
- 積分の変数変換の公式と, 微分形式の座標変換の公式(今の場合 dy = (dy/dx) dx) がちょうど同じになっている.
- M に`向き'を入れておけば, 座標の取り方にはよらずに well-defined.
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試験問題
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nakajima@kusm.kyoto-u.ac.jp