2012年度前期講義「幾何学I」
目次
開講のお知らせ
4月11日
4月18日
5月2日
5月9日
5月16日
5月23日
5月30日
6月6日
6月13日
6月20日
6月27日
7月4日
7月11日
7月18日
試験問題
4月11日開講
4月25日は休講
5月16日は午前、午後ともに小テスト
7月11日は、月曜日授業のため、なし
7月25日 10:30 〜 14:30 が試験 (弁当持ち込み可, 教科書、ノート、プリント類は持ち込み不可)
授業の概要・目的
多様体について基本的な事項を説明する.
多様体は高次元の図形の概念として
もっとも確立しているものである.
多様体の概念は,大学3年以後での幾何学の一番の基礎であるだけではなく,
現代数学の多くが多様体上で行われるという意味で,
現代数学全体の基礎でもある.
授業計画と内容
- 多様体の定義
- 多様体の接空間の定義
- 多様体の間の写像の微分可能性や微分の定義
- 写像の臨界値、正常値
- ベクトル場
- 積分曲線
- 微分形式
- 微分形式の積分
- ストークスの定理
履修要件
多変数関数の微積分学、
線形代数学
は既知とする.
位相空間論(集合と位相)、ユークリッド空間に埋め込まれた多様体(幾何学入門)
についても知識がある事が望ましい.
成績評価の方法・基準
学期末試験と、講義中に行う小テストの結果により評価する。
参考書
- 坪井俊 『幾何学I 多様体入門』東京大学出版会
- 坪井俊 『幾何学III 微分形式』 東京大学出版会
以下, [坪井I], [坪井III] で引用する.
過去の対応する授業
のレジュメは, http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/Lecture/07_Kika1.html,
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/Lecture/03_Kika1.html,
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/Lecture/00_Kika2.html
にある。今年度のレジュメもWeb pageで公開する予定である。
4月11日の午前中にやったこと
§序. ユークリッド空間に埋め込まれた多様体と抽象的な多様体
- 空間を貼りあわせで作る. 二次元球面, トーラスから三次元球面, トーラスへ
- $\C^2$の中の二次元多様体 $y^2 = (x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$
- 空間を商空間で作る. (実)射影空間
- 座標と座標変換
§1. 多様体の定義 [坪井I§3.1]
4月11日の午後にやったこと
多様体の例.
- $S^n$
- メビウスの帯
- 実射影空間 [坪井I 例題3.3.6]
小テストと略解pdf
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4月18日にやったこと
多様体の例の続き
§2. $C^\infty$級関数, $C^\infty$級写像 [坪井I§3.4]
- 多様体上の関数 $f: M\to \R$ が $C^\infty$級であることの定義. 任意の座標系 $\varphi: U\to \varphi(U)$ を取ると, $f\circ \varphi^{-1}$が $C^\infty$である.
- 多様体 $M$, $N$の間の連続写像 $f: M\to N$ が $C^\infty$級であるとは,
各点 $p\in M$に対して, その回りの座標系 $\varphi: U\to U'$ と $f(p)$の回りの座標系 $\psi: V\to V'$ で, $f(U)\subset V$となっているものが取れて, $\psi\circ f\circ \varphi^{-1}$が $C^\infty$級であるときをいう.
- 二つの$C^\infty$級写像の合成は, $C^\infty$級写像である.
- $1$次元射影空間の間の写像
演習問題 pdf,
解答 pdf
5月2日にやったこと
§3. 接空間
- $p$を含む開集合 $U$上で定義された関数 $f$を、$p$を含む開集合 $V$ 上では $f$ のままになるように、$M$ 全体へ拡張すること。
- 多様体 $M$ の点$p$における接ベクトルの定義,
- 接ベクトルの全体を接空間といい, $T_p M$ で表わす.
- 座標 $\varphi: U\to \varphi(U)$を取ったとき, $\left(\frac{\partial}{\partial x_i}\right)_p$の定義
- $i = 1,..,n$ と動かしたとき, これが接空間 $T_p M$の基底をなす.
- 二つの座標が与えられたとき, 上の基底の変換行列が座標変換のヤコビ行列で与えられる.
- $f$ が $M$ 上の$C^\infty$級関数のとき, $df_p: T_p M\to \R$が定まる.
- $F: M\to N$が$C^\infty$級写像のとき, $dF_p: T_p M\to T_{F(p)}N$
が定まる. これを $F$ の $p$ における微分という.
- $dF_p$は座標を取れば, ヤコビ行列に他ならない.
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5月9日にやったこと
- 合成写像の微分法則 $d(G\circ F)_p = d G_{F(p)} dF_p$
- $F : M \to N$がはめ込み, 埋め込み, 沈め込み, であることの定義
- はめ込みと埋め込みの違いについて説明
- $M$を$m$次元$C^\infty$級微分可能多様体とする.
$S\subset M$ が$d$次元部分多様体であるとは, $S$の各点 $p$ に対して, $p$のまわりの座標系
$\varphi: U\to \varphi(U)$ であって、$\varphi(x) = (x_1,\dots,x_m)$と書いたときに、
$S \cap U = \{ x_{d+1} = \dots = x_m = 0 \}$ となるものが
取れる.
- 命題. $S$が部分多様体であることと、次は同値
- $S$の各点 $p$ に対して, その近傍 $U$ と, $U$ 上で定義された $C^\infty$ 級写像 $F: U\to \R^{m-d}$であって, $dF_p$ は全射、$U\cap S = F^{-1}(0)$を満すものがあるときをいう.
- $S$ は $d$次元$C^\infty$級微分可能多様体の構造であって, 包含写像 $S\subset M$ が埋め込みとなるものがある。
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解答 pdf
5月16日にやったこと
午前中の小テスト 問題, 解答
午後の小テスト 問題, 解答
5月23日にやったこと
- 先々週に残した命題の証明の残り
- 臨界点, 正常点, 臨界値, 正常値の定義
- $f: M\to N$ とし, $p\in N$が正常値のとき, $f^{-1}(p)$は空集合でなければ, $M$の部分多様体である.
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5月30日にやったこと
§4. ベクトル場
- ベクトル場の定義. 各点 $p\in M$ にたいして $X_p$ という接空間 $T_p M$の元が与えられ, 座標ベクトル場を用いて表わしたときに, 係数が $C^\infty$級という意味で, $C^\infty$級であるものをベクトル場という.
- $X$, $Y$ : ベクトル場, $f$ : $C^\infty$級関数のとき, $X+Y$, $fX$ はやはりベクトル
場になる.
- ベクトル場による関数の微分 $Xf$ の定義
- 定理. $X: C^\infty(M) \to C^\infty(M)$ が 線形でライプニッツの法則を満たすとき, それはベクトル場が定めるものである.
- 1-パラメータ部分群 $\varphi_t$ の定義と、$M$ 上ベクトル場$X$を$X_p = \left.\frac{d}{dt} \varphi_t(p)\right|_{t=0}$ で定めること。
- $\varphi_{t+s} = \varphi_t \circ \varphi_s$ を満たす.
- $\Phi: \R\times M\to M$は$C^\infty$級
- ベクトル場 $X$ が与えられたとき, $\frac{dc}{dt} = X_{c(t)}$ を満たす曲線をその積分曲線という. 初期値 $c(0) = p$を与えたとき少なくとも十分に小さい$t$については、常微分方程式の解の存在定理より存在する. 上の$\Phi$の定義域を$\R\times M$から、開集合 $U$ に変えれば、1-パラメータ変換群が存在する。
- ベクトル場のLieブラケット $[X,Y]$ の定義
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6月6日にやったこと
- 極大積分曲線、ベクトル場が完備であることの定義
- ベクトル場 $X$ に対応する局所1パラメータ変換群を$\varphi_t$とすると,
$$Xf = \lim_{t\to 0} \frac{\varphi_t^* f - f}t$$
が成り立つ。
- ベクトル場 $X$ に対応する局所1パラメータ変換群を$\varphi_t$とすると,
$$[X, Y] = \lim_{t\to 0} \frac{(\varphi_{-t})_* Y - Y}t$$
が成り立つ。
- ベクトル場 $X$ に対応する局所1パラメータ変換群を$\varphi_t$, $Y$に対応するのを$\psi_s$とすると, $[X,Y] = 0$ のとき、$\varphi_t \psi_s = \psi_s\varphi_t$ が成り立つ。これは、常微分方程式系の可積分条件に対応する。
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6月13日にやったこと
§5. 微分形式と積分
まず1次微分形式を説明した。
- 余接空間 $T^*_p M = T_pM$の双対空間
- 座標を取ると $(dx_1)_p,\dots,(dx_n)_p$が$(\partial/\partial x_1)_p, \dots, (\partial/\partial x_n)_p$の双対基底として定まる.
- 1次微分形式 $\alpha$ とは, 各点 $p$ ごとに$T^*_p M$ の元 $\alpha_p$
が与えられているもので, 上の基底の一次結合で書いたときに, その係数が $p$ について$C^\infty$級になるもののことである.
- 座標変換の公式. $dx_i = \sum_j \frac{\partial x_i}{\partial y_j} dy_j$
- 微分形式の引き戻し $F^*\alpha$ を
$(F^*\alpha)_p(v) = \alpha_{F(p)} (dF_p(v))$で定義
- $C^\infty$級関数 $f$ に対する外微分作用素 $df$ の定義
$$df(v) = vf$$ for $v\in T_p M$.
- 1次微分形式$\alpha$と1次元多様体 $C$ について $\int_C \alpha$ を定義する.
(きちんとはやらなかった)
- $C = C_1\sqcup\cdots\sqcup C_n$ を分けて、それぞれの区間にパラメータを入れる。
- $\int_C \alpha = \sum \int_{C_i} \alpha$ として、各$C_i$ごとに定義すればよい。分け方によらないことは、二つの分け方の共通の細分を考えればすぐに分かる。
- 座標を入れて $\alpha = a(x) dx$ と表わしたとき
$\int_{C_i} \alpha = \int_{a_i}^{b_i} a(x) dx$と定義する。
- 積分の変数変換の公式と, 微分形式の座標変換の公式(今の場合 $dy = (dy/dx) dx$)がちょうど同じになっているために、パラメータによらずに積分は符号をのぞいて同じになる。
- $C$ に`向き'を入れておけば, 符号の ambiguity も消えて、座標の取り方にはよらずに well-defined.
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6月20日にやったこと
- 関数 $f$ の微分 $df$ を積分したとき
$$\int_p^q df = f(q) - f(p)$$
となること
- 2次元の積分の変数変換公式
$$\int_U f(x,y) dx dy = \int_V f(x(u,v),y(u,v)) \left|\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}\right| du dv$$
を思い出す。
- 2次微分形式の座標変換の公式
$$dx\wedge dy = \frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)} du\wedge dv$$
と、同じになっている。
- $2$次元多様体の向き、メビウスの帯は向きを持たない。
- 多様体上の微分形式の定義
- 座標変換での微分形式の変換性
- 微分形式 $\alpha$, $\beta$に対して $\alpha\wedge\beta$の定義
- 来週の予告として、$d\alpha$ の定義の動機付け (ストークスの定理)
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6月27日にやったこと
- $k$次微分形式の引き戻し
- $2$変数の1次微分形式$\alpha = f dx + g dy$の場合に、$d\alpha = (-\partial f/\partial y + \partial g/\partial x) dx\wedge dy$ が座標変換でうまくいっていることを計算で示した。
- 外微分作用素の定義。座標を取り、$\alpha = \sum_{i_1<\dots < i_k} \alpha_{i_1,\dots,i_k} dx_{i_1}\wedge\dots\wedge dx_{i_k}$ と書くと、
$$d\alpha = \sum_{i_1<\dots < i_k} \sum_j \frac{\partial \alpha_{i_1,\dots,i_k}}{\partial x_j} dx_j\wedge dx_{i_1}\wedge\dots\wedge dx_{i_k}$$
- $\alpha$を$k$次微分形式とするとき
$$(d\alpha)(X_1,\dots,X_{k+1}) = \sum_{i} (-1)^{i+1} X_i (\alpha(X_1,\dots,\widehat{X_i},\dots,X_{k+1})) + \sum_{i < j} (-1)^{i+j} \alpha([X_i,X_j],X_1,\dots,\widehat{X_i},\dots,\widehat{X_j},\dots,X_{k+1})$$
が成り立つ。特に、$d\alpha$は座標のとり方によらずに、well-defined.
- $dd\alpha = 0$
- $d(\alpha\wedge\beta) = (d\alpha)\wedge\beta + (-1)^k \alpha\wedge (d\beta)$
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7月4日にやったこと
- $d f^* = f^* d$の証明
- 多様体の向き
- 1の分割
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7月18日にやったこと
- 積分の定義
$$\int_M \omega = \sum_\alpha \int_M \rho_\alpha \omega$$
として、座標近傍に入っている場合に帰着し、その場合は積分の変数変換の公式と微分形式の変数変換の公式が同じことを用いる。
- 境界付き多様体
- Stokesの定理
$$\int_M d\omega = \int_{\partial M} i^*\omega$$
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試験問題
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