研究課題 A01-2 | 中性粒子計測における超伝導転移端検出器の安定動作に向けた基盤構築 |
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研究代表者 | 藤本 龍一 (金沢大学) |
超伝導遷移端マイクロカロリメータ(TES)は,非分散でありながら回折格子に匹敵する高いエネルギー分解能を実現する X 線検出器で,X 線分光装置として注目されています。遮蔽窓に穴を開けて安定に動作させることができれば,中性粒子計測を含め,応用範囲が格段に広がることが期待されます。本研究では,3 次元の電磁界・熱シミュレーション計算と実測を駆使して最適なシールド環境を実現し,最終的には遮蔽窓なしで TES を安定動作させる方法論の確立を目指しています。これにより,TES 応用の基盤を強化し,TES カロリメータの優れた性能を中性粒子計測を含む他の分野での最先端計測に生せるようにします。これはまた,初期宇宙観測等,天文観測のブレークスルーにも繋がることが期待されます。
平成 31 年度は,計算と実測により,遮蔽窓を含む実際のセットアップで電磁界・熱の 3 次元シミュレーション計算の手法を確立します。平成 32 年度は,新たに確立した方法に基づいて,金沢大の冷凍機システム,J-PARC,理研,産総研等の現有する複雑な系に対して電磁界・熱のシミュレーション計算を実施し,さらにシミュレーション精度を向上させます。
研究代表者(藤本)は過去 20 年に渡って,衛星搭載用 X 線マイクロカロリメータの開発を主導し,同時に実験室での TES カロリメータの基礎開発を進めて,その性能を安定して実現できる極低温の動作環境を構築してきました。自前の断熱消磁冷凍機(ADR)上で,これまでに 5.9 keV の X 線に対して,FWHM 3 eV を切る分光性能を実現している。研究協力者(野田)は熱計算については,衛星や地上実験装置で豊富な経験を持ちます。研究協力者(山田)は計画研究のメンバで,地上応用実験にも精通しており,計画研究のチームと円滑に連携できる体制とします。
メンバー
- 研究代表者
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藤本 龍一
(金沢大学 理工研究域)
- 研究協力者
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野田 博文 (大阪大学 大学院理学研究科)
山田 真也 (首都大学東京 理学研究科)
関連資料
- R. Fujimoto et al., “Performance of the helium dewar and the cryocoolers of the Hitomi soft x-ray spectrometer,” J. Astron. Telesc. Instrum. Syst. 4, id. 011208 (2018).
- Hitomi Collaboration, “Atmospheric gas dynamics in the Perseus cluster observed with Hitomi,” Publ. Astron. Soc. Jpn. 70, id.9 (2018).
- U. Hishi, R. Fujimoto, M. Kotake, H. Ito, K. Tanaka, Y. Kai, Y. Kinoshita, “X-ray study of extended emission around M 86 observed with Suzaku,” Publ. Astron. Soc. Jpn. 69, id.42 (2017).
- U. Hishi, R. Fujimoto, M. Kamiya, M. Kotake, H. Ito, T. Kaido, K. Tanaka, K. Hattori, “Temperature control and noise reduction in our compact ADR system for TES microcalorimeter operation,” J. Low Temp. Phys. 184, 583 (2016).
- U. Hishi, R. Fujimoto, T. Kinoshita, S. Takakura, T. Mitsude, K. Kamiya, M. Kotake, A. Hoshino, K. Shinozaki, “Magnetic shielding of an adiabatic demagnetization refrigerator for TES microcalorimeter operation,“ J. Low Temp. Phys. 176, 1075 (2014).