公募研究 概要

研究課題 A01-6 革新レーザー技術で拓くエキゾチック物質の量子操作
研究代表者 桂川 眞幸 (電気通信大学)

研究代表者は, 非線形光学過程の進行過程において, そこに関与する電磁場の相対位相関係を, 望まれる相互作用長において, 望まれる値に操作することで, その非線形光学過程を様々な形態に誘導できることを明らかにしました。中赤外から真空紫外の超広帯域をカバーする量子効率1の波長変換はその典型例です。図1は高次の誘導ラマン散乱光発生過程に上述の位相操作を組込むことで, 入射レーザー光が波長 120–200 nm の特定のアンチストークスモードにほぼ 100% の効率で波長変換されることを示した数値計算の結果です。原理実証実験もおこなわれ, ここで示された物理が現実にも機能することが確かめられました。


図 1. 位相操作を組込むことによる特定次数のアンチストークス光(120–200 nm)へのエネルギー集中 (Sci. Rep. 5, 8874 (2015)).
レーザーの発明から 60 年を経て高度で多様なレーザー技術が実現されている現代においても, 中赤外域や真空紫外域には実用に耐えうる単一周波数・波長可変レーザーは存在しません。この波長域に透明な固体材料がほとんど無いことがその根源的な理由になっています。この公募研究では, 気相の媒質を用いた非線形光学過程に上述の物理を組込むことで, エキゾチック原子の一つであるミューオニウムのレーザー冷却(2p-1s 遷移(Lyman α): 122.09 nm)を可能とする性能をもつ真空紫外・単一周波数・波長可変レーザーの実現を目指します。また, 実現された真空紫外・単一周波数・波長可変レーザーを用いて, 実際にミューオニウムをレーザー冷却するための定量的なシナリオを実験的に構築することを試みます。

メンバー

研究代表者
桂川 眞幸
(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)
研究協力者

関連資料

  • C. Ohae, J. Zheng, K. Ito, M. Suzuki, K. Minoshima, and M. Katsuragawa, “Tailored Raman-resonant four-wave-mixing process,” Opt. Express 26, 1452 (2018).
  • M. Katsuragawa and K. Yoshii, “Arbitrary manipulation of amplitude and phase of a set of highly discrete coherent spectra,” Phys. Rev. A 95, 033846 (2017).
  • J. Zheng and M. Katsuragawa, “Freely designable optical frequency conversion in Raman-resonant four-wave-mixing process,” Sci. Rep. 5, 8874 (2015).
  • T. Suzuki, M. Hirai, and M. Katsuragawa, “Octave-spanning Raman comb with carrier envelope offset control,” Phys. Rev. Lett. 101, 243602 (2008). [Cover]