宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。

研究課題 B01-4	ミュオン特性Ｘ線分析によるリチウムイオン電池内部の金属リチウムイメージング
研究代表者	梅垣 いづみ (高エネルギー加速器研究機構)

本公募研究では, ミュオン特性 X 線のイメージングにより, リチウムイオン電池の内部の金属リチウム析出検出の実現を目指すものです。これまでの私たちの研究で, ミュオン特性 X 線元素分析により, ミュオンの捕獲率の違いを利用して, リチウムイオン電池内の金属リチウムが検出できることを示しました。横約 3 cm × 縦約 4 cm の面積の電極の平均情報として, 検量線を作成して, 金属リチウムを定量することができます。新学術領域 B01 班の取り組む元素分析のイメージングの技術により, リチウムのイメージングを実現し, リチウムイオン電池の熱不安定性と金属リチウム析出の関係を明らかにします。

近年, リチウムイオン電池の市場拡大に伴い, 中古電池のリユースや, 資源の再利用の重要性が高まっています。しかしながら, 一般に中古電池は容量低下だけでなく, 金属リチウムが析出していることが考えられ, 安全に中古電池を回収することが大きな課題となっています。金属リチウムは, リチウムイオン電池の負極で, 不適切な使用条件下で, リチウムが還元されて金属として析出するもので, 電極間の短絡や発熱により, リチウムイオン電池の熱安定性を低下させる原因となります。金属リチウム析出の発生・成長と, 電池の熱反応の促進にどのような関係があるかは, これまで以上に安全に中古電池を取り扱うために重要と考えます。金属リチウム析出を溶解・消失させる技術の取り組みに合わせた, 検出方法の必要性が高まっています。

負ミュオンを用いたミュオン特性 X 線元素分析は他に類を見ない, 強力な非破壊分析手法となり得る高いポテンシャルを有しています。新学術領域研究の B01 班との連携により, 本課題を推進し, 新しい分野を切り開きたいと思います。


図 1. 負極に析出した金属リチウム析出の (a) 断面SEM画像と (b) 模式図。(c) ミュオンによるリチウムの検出感度。

メンバー

関連資料

• I. Umegaki et al., Anal. Chem. 92(12), 8194–8200 (2020).
• I. Umegaki et al., J. Comput. Chem., Jpn. 19, 99–105 (2021).