公募研究 概要

研究課題 C01-6 CdTe 半導体検出器を用いたアルファ線放出核種 At-211 の生体内イメージング
研究代表者 桂川 美穂 (東京大学)

核医学分子イメージングにおいて腫瘍の転移や薬剤動態を研究する際に, いかに弱い信号を検出できるか, という検出器の感度は非常に重要な問題です。近年, 注目を集めているアルファ線放出核種 At-211 においても同様です。At-211 は, 飛程の短いアルファ線を放出するだけでなく, 79 keV の硬 X 線を放射します。そのため, At-211 は新しいがんの治療方法(アルファ線治療, 図 1)として有用なだけでなく, 硬 X 線による診断や治療後の体内動態の画像化が行えるため実用化への期待が非常に高い核種です。しかし, I-125 や In-111 など他の放射性核種と比べて At-211 は生体内に投与できる量が限られているため, 検出器の感度の向上が求められています。さらに, 高い感度を維持したままで, どれだけ高い画像分解能を実現できるのかというのも大きな課題です。


図 1. 新しいアルファ線治療とこれまでのベータ線治療の違い。


本研究では, C01 班で開発が進められているテルル化カドミウム両面ストリップ型検出器(CdTe-DSD)を用いて可搬型の高感度な小動物撮像装置を開発し, 生体内における At-211 の定量的な可視化に取り組みます。特に, CdTe-DSD を並べることで撮像面積を拡大し, 小動物の全身を1回で撮像できるような大面積の装置の開発に取り組みます。光学系には, 最新の金属 3D プリンタの技術を用いたタングステン製の平行孔コリメータを使用します。コリメータの検出効率や位置分解能, 視野を考慮し, コリメータの形状や隔壁厚, 傾斜角の最適化を行います。また, 開発した装置を用いて, 小動物の生体における At-211 のダイナミック撮像を行い, 臓器や腫瘍への集積を定量的に明らかにします。本研究が実現すれば, At-211 以外への放射製薬剤への応用だけでなく, 生体内の放射性プローブの集積の有無を 5–10 分程度の短時間で確認できるようになるため, 薬剤開発でのスクリーニング用装置としての役割も期待できます。

メンバー

研究代表者
桂川 美穂
東京大学 国際高等研究所 カブリ数物宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
研究協力者
藤井 博史 (国立がん研究センター 先端医療開発センター)
柳下 淳 (東京大学 国際高等研究所 カブリ数物宇宙研究機構 (Kavli IPMU))
武田 伸一郎 (東京大学 国際高等研究所 カブリ数物宇宙研究機構 (Kavli IPMU))
高橋 忠幸 (東京大学 国際高等研究所 カブリ数物宇宙研究機構 (Kavli IPMU))

関連資料

  • T. Takahashi et al., “High-resolution Schottky CdTe diode for hard X-ray and gamma-ray astronomy,” Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A 436, 111–119 (1999).
  • S. Watanabe et al., “CdTe stacked detectors for gamma-ray detection,” IEEE Trans. Nucl. Sci. 49, 1292–1296 (2002).
  • S. Takeda et al., “A high-resolution CdTe imaging detector with multi-pinhole optics for in-vivo molecular imaging,” Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A 912, 57–60 (2018).
  • M. katsuragawa et al., “A compact imaging system with a CdTe double-sided strip detector for non-destructive analysis using negative muonic X-ray,” Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A 912, 140–43 (2018).