研究課題 D01-6 | 高運動量ハドロンビーム反応測定のための粒子識別検出器の開発 |
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研究代表者 | 白鳥 昂太郎 (大阪大学) |
J-PARC ハドロン実験施設では, 量子ビームとして二次粒子ハドロンビーム (π や K 中間子, 反陽子) を使用できます。2020 年に既存ビームラインよりも高運動量のビームを供給できる J-PARC 高運動量ビームラインが完成し, 30 GeV の一次陽子ビームの取り出しに成功しました。加えて, 高運動量ビームラインは, ビーム取り出し部分に二次粒子生成標的を置くことにより, 20 GeV/c までの高運動量二次粒子ハドロンビームを供給できるように予め設計されています。この運動量領域のハドロンビームは世界的にユニークであり, J-PARC の大強度ビームのおかげでチャームクォークや複数のストレンジクォークを含むハドロンを効率良く生成することができ, 特徴あるハドロン・原子核物理の研究が展開できます。既存のハドロン実験施設のビームラインは 2 GeV/c が最高運動量で, 2–20 GeV/c のハドロンビームによって, これまで生成できなかったチャームクォークや複数のストレンジクォークを持ったハドロンを用いたハドロン・原子核物理の研究を新たに開拓できます。特に中心的に進めているチャームバリオン分光実験では, 重いチャームクォークを導入することで, 強い相互作用によってハドロンに閉じ込められたクォークの運動や相関を詳細に調べることができ, ハドロンの新しい有効自由度と考えられているダイクォーク相関を明らかにできると期待されます。
我々はチャームバリオン分光実験のために, 大立体角スペクトロメータの開発を進めてきましたが, これを利用した様々なハドロン・ハイパー核の実験も提案されています。チャームバリオン分光実験のみならず, 高運動量ハドロンビーム反応を利用した多彩な実験研究を推進する汎用スペクトロメータとして建設しています。この汎用性の高いスペクトロメータの重要な粒子識別検出器がリングイメージチェレンコフ検出器 (RICH) であり, 2–17 GeV/c の広い運動量領域で粒子識別が可能です。散乱粒子の広い運動量領域を測定するため, チェレンコフ輻射体としてエアロゲルとガスを使用したハイブリッド型の RICH として設計しています。光センサーには磁気スペクトロメータの漏れ磁場を考慮し, Micro Pixel Photon Counter (MPPC) を使用します。MPPC の小さい受光面積を補う集光装置を開発し, RICH として新しい検出器構成要素である MPPC を導入し, 利用を実現します。本研究では, 高運動量ハドロンビーム反応から生成される高運動量粒子識別を行うための RICH 実証機を開発し, チャームバリオン分光実験や多彩なハドロン・原子核の実験研究を推進する汎用スペクトロメータを建設するための検出器技術を確立します。
図 1. (左) 汎用スペクトロメータと (右) リングイメージチェレンコフ検出器の全体図。
メンバー
- 研究代表者
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白鳥 昂太郎
(大阪大学 核物理研究センター (RCNP))
- 研究協力者
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野海 博之 (大阪大学 核物理研究センター (RCNP))
山我 拓巳 (理化学研究所 開拓研究本部)
成木 恵 (京都大学 理学系研究科)
本多 良太郎 (高エネルギー加速器研究機構 (KEK))
関連資料
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H. Noumi et al. , J-PARC E50 Proposal (2012). -
K. Shirotori et al. , JPS Conf. Proc. 8, 022012 (2015). -
S. H. Kim ,A. Hosaka ,H. C. Kim ,H. Noumi ,K. Shirotori , Prog. Theor. Exp. Phys. 2014, 103D01 (2014). -
T. Yamaga et al. , Nucl. Instrum. Methods Phys. Res. A 766, 36–38 (2014). -
T. Yamaga et al. , ELPH Annual Report 2014 (Tohoku University), 83–88 (2014).