公募研究 概要

研究課題 E01-1 イオンビームを用いた高エネルギー光渦生成の基礎的研究
研究代表者 田中 実 (大阪大学)

全角運動量は軌道角運動量 (orbital angular momentum, OAM) とスピン角運動量 (spin angular momentum, SAM) の和で表わされます。電磁場が角運動量を持つことは 1909 年にポインティングによって指摘され,1936 年に Beth によって実験的に確認されました. 電磁場の量子である光子はスピン 1 を持つ素粒子であることが判っていますが,Beth の実験はこのスピンを測定したものでした。また,OAM を持つ非自明な電磁場として多重極場がよく知られています.これに加えて,現在では OAM を持つ光ビームも可視光領域で実現していて,その応用研究が盛んに行われています.このような光は,図 1 のように波面が螺旋状になっているので光渦 (optical vortex) や twisted photon などと呼ばれています.

図 1: 光渦の波面
図 2: 後方散乱によるエネルギー変換

一方,X 線領域やガンマ線領域の高エネルギーの光源の開発も活発に行われています。自由電子レーザーによる X 線の生成や後方コンプトン散乱によるガンマ線の生成が挙げられますが,部分的に電子を剥ぎ取った超高速イオンによる (可視領域) レーザー光の共鳴吸収による励起とその脱励起による高エネルギー光子の生成も提案されています (図 2 参照)。この後方共鳴レイリー散乱によるエネルギー変換の特徴は,その大きな散乱断面積にあります.

本研究計画では,加速されたイオンのビームを用いた高エネルギー光渦生成について,理論的な研究を行います。これまでに提案されている光渦レーザーの後方コンプトン散乱によるエネルギー変換と比較して,イオンビームを用いる方法の利点を明らかにしその原理を構築することが,主な目的となります.

メンバー

研究代表者
田中 実
(大阪大学 大学院理学研究科)
研究協力者

関連資料

  • M. Tanaka and N. Sasao, “New method of generating gamma rays with orbital angular momentum,” arXiv: 2102.00661 [hep-ph]