研究課題 C01-3 | 高性能SPECTを用いた中枢リンパ系ドレナージの循環動態イメージング法の開発 |
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研究代表者 | 水間 広 (理化学研究所) |
私たちの体は細菌やウイルスなどの外敵から常に防御する仕組みである「免疫」が備わっています。この免疫の機能を担う細胞は骨髄や胸腺で成熟し, 血液やリンパ液を通じて全身に到達します。この免疫機構は全身に見られますが, 脳の組織(中枢組織)では血管と組織の間(血液-脳関門)は血液中の物質や細胞が容易に通過せず, また, リンパ液を輸送するリンパ管は存在しないことからも, 他の体組織(末梢組織)とは異なる免疫の仕組みが存在することが知られていました。
近年, 長らく存在しないと言われていたリンパ管が中枢組織にも存在することが動物基礎研究から証明され, ヒトにも存在することが明らかになりました。このリンパ管の存在により, 中枢組織における新たな免疫体系が示唆され, 現在, 全世界で活発に研究が進められています。今までに, 中枢組織のリンパ管では脳組織中で不要となった老廃物質が脳脊髄液を介し排泄されること, また免疫細胞が脳内へ侵入するための新たな経路があることが徐々に明らかになりました。この機構は病的な状態では変化し, 例えばアルツハイマー病や多発性硬化症などの疾患に関与する可能性も示唆されています。
このように中枢組織でのリンパ管が発見され, 構造や機能について少しずつ明らかになってきていますが, 中枢リンパ管全体を包括的に生きたまま可視化する技術は未だ確立されていません。本研究では小動物の生体イメージング研究技術を応用し, 生体における中枢組織リンパ管の循環動態イメージング法の開発に着手します。また, 生体イメージング装置には宇宙観測研究から得られたガンマ線検出法をベースとするテルル化カドミウム(CdTe)半導体素子による検出器をもつ高解像度の単一光子放射断層撮影装置(SPECT)を用います。本装置は既存の SPECT 装置よりもはるかに優れた感度と空間分解能を有し, 複数の核種を同時にイメージングすることが可能となります。リンパ管内における老廃物や細胞の流れを放射性核種であるインジウム 111(In-111), ガリウム 67(Ga-67), またはテクネシウム 99m(Tc-99m)などを高分子蛋白(オボアルブミン等)や免疫細胞である T 細胞に標識し, 本装置を用いて撮像します。本研究が実現することにより, 脳神経系の疾患や腫瘍に対する新たな診断技術の創出および治療戦略モデルの構築を目指します。
マウスの中枢リンパ管の模式図(左)は摘出したマウス脳組織を蛍光顕微鏡による観察から解剖学的位置は把握されているが, 生体イメージング法は確立されていない。「真」の循環動態を可視化するため, 放射性核種(In-111, Ga-67, Tc-99m など)を高分子化合物や細胞に標識し高性能 SPECT 装置を用いて撮像する(右図)。
メンバー
- 研究代表者
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水間 広
(理化学研究所 生命機能科学研究センター)
- 研究協力者
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金山 洋介 (理化学研究所 生命機能科学研究センター)
武田 伸一郎 (東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構)
高橋 忠幸 (東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構)
藤井 博史 (国立がん研究センター 先端医療開発センター)
関連資料
- H. Mizuma et al., “Establishment of in vivo brain imaging method in mice under conscious condition,” J. Nucl. Med. 51, 1068–1075 (2010).
- T. Kambe et al., “Differential regional distribution of phosphorylated tau and synapse loss in the nucleus accumbens in tauopathy model mice,” Neurobiol. Dis. 42, 404–414 (2011).
- Y. Hara et al., “Involvement of the septo-hippocampal cholinergic pathway in association with septal acetylcholinesterase upregulation in a mouse model of tauopathy,” Curr. Alzheimer Res. 14, 94–103 (2017).
- N. Nakai et al., “Serotonin rebalances cortical tuning and behavior linked to autism symptoms in 15q11-13 CNV mice,” Sci. Adv. 3, e1603001 (2017).